2011年3月28日月曜日

真っ暗な東京の夜に思うこと

震災からはや2週間あまり。
東京ではこのところ店舗やネオンの照明が節電のため落とされ、BGMもとても控えめです。
最初は少しとまどったものの、この真っ暗で静かな生活にも慣れてきました。
そんななか、以前旅したキューバのことを思い出しています。

photographs by IWAO KOMIYAMA all right reserved.


















キューバを訪れたのは2006年。
旅行が好きで色々な国に行きましたが、
あれほどカルチャーショックを受けた国はありませんでした。
物が溢れる日本に比べ、キューバは物質的に恵まれた国、ではないのかもしれませんが
あれほど精神的に豊かな国を私は知りません。

公園ではお年寄りと若者がチェスに興じたり、子供たちは旧市街の空地で野球、
ミカン箱でお父さんが作ってくれたという自作のスライダーのようなものを楽しむ少年たち、
ノーブランドのファッションを本当におしゃれに着こなす人々。
街角ではいつもどこかで演奏や歌声が聞こえ、
防波堤から家族15人(!)で反抗期世代の子供たちもそろって両親と一緒に夕日を眺めていたり、
とにかく物や電気に頼らず、思い思いに人生を楽しむことが上手な人であふれていました。
以前から計画停電も日常的にキューバでは行われているそうで、
「そんな日は近所の人も一緒にパティオで夕食を持ち寄って食べるのよ」
とにこやかに奥さんが話していたのを思い出します。

上空からキューバの街を眺めたアメリカ人が
「停電だと思った」と皮肉った話を聞いたことがありますが、
夜になるととにかく真っ暗。
「元気?」と声をかけてくる道行く人の真っ白な歯だけがやたら目立つほど。
でも決してキューバは犯罪は多くないとキューバ在住の日本人女性が言ってましたっけ。
「キューバはみんな平等にものを持たないからかもしれないけど。
医療費や教育費は無料だし、住宅費も驚くほど安い。
基本的な食料もほとんどが配給されるからみな生活が最低限は保障される。
物質的には豊かでない印象はあると思うけれど、
例えば、キューバ人医師や医学生を、国外に派遣することにもとても熱心。
カストロを尊敬する国民がとても多いのは、
彼らにキューバ人としての誇りも与えているからだと思う」

様々な驚きとともに、
日本人である自分の中の「貧しさ」に気づかされ、
そして「足ることを知る」キューバの人々の心の豊かさに感心しました。
次々に湧き上がる欲求を満たすために、より多くのエネルギーを作るという方法ではなく、
原子力に頼らない生活に、使う側が生活スタイルを変える選択肢もあるということ。
あらゆる方向で、足ることを知らず発展を求めてきたという気がしてならない日本ですが、
真っ暗な東京で、私たちは今考えるチャンスをもらっている気がします。 




何とも言えない美しい風情をもつ、世界遺産ハバナ旧市街。
スペイン統治時代のままの旧市街の建物を、立て替えることなく、
修復しながら大切にキューバの人々は維持しています。
クラシックカーも大切に整備されて現役で活躍中。

ミカン箱で作ったんだと自作の乗り物で遊ぶ二人。ものすごく楽しそうでした。


↑生活電力もさることながら、とにかく無駄な電気を使うことがない国。チェスをはじめ、同じ趣味などを通じて、街角では年齢に関係なく、お年寄りと若者が自然に過ごしていたのも印象的でした。

↑日本人が珍しいのか、どこへ行っても「チーノ!チーノ!(中国人)」と呼びとめられ、日本人とわかると日本のことを根掘り葉掘り…。キューバのお茶の間で今なお「おしん」は人気で、彼らの中の日本人のイメージは「質素で努力家」のまま。陽気でフレンドリーな彼らを落胆させたくないものです…

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